いつも前のめり

好きなことを好きなだけ

人生が思い出せなかった

 

私は主にネットバンクを利用している。

そのほとんどはコンビニのATMからか、専用のアプリからの利用だ。

けれど、この時期になるとどうしてもパソコンからブラウザでアクセスする必要に迫られる。なんといっても確定申告。毎月やっておけよという話なのだけど、私はこの時期にまとめて必要書類を集めて回る羽目になっている。

なので、今年も同じようにパソコンからのアクセスを試みたのだが、セキュリティの関係からか、いつもの入力項目の他に「合言葉」というものを要求された。

そう、あれだ。

アブラカタブラでもなく、メルロンでもない。

私自身が口座を開く際に設定し、私だけが答えられるあの言葉だ。

当然ながら、私は私自身でしかないので、ID提示よりも簡単なその質問に答えることにした。

のだけれど、嘘でしょってぐらいに、オール不正解で締め出されてしまった。

いやマジで、そんなことある???

ちなみに、文字は「ひらがな」とわざわざ指定されており、半角英数などと間違うこともない、やさしい設計。

だというのに、私は私のことを答えられないばっかりに、アクセスロックで初期化パスワードを請求することとなった。

そもそも、あの「合言葉」というのは、私の人生にまつわることが多い。

出身地とか、好きな音楽とか、いわゆるプロフ帳的なやつ。

まさに私自身の一問一答。

答えはたった1つなのに、その1つにたどり着けない。

結局、私はかつての私が設定した「私の人生にまつわる合言葉」の正解を知ることもできないまま、合言葉を初期化してしまった。

そんな、なんだかなぁ、の気持ちを抱えたまま、入出金明細をダウンロードし、粛々とリストアップされた数字を帳簿につけながら今日を過ごす。

これもまた人生か。

あばよ、記憶の果ての合言葉たち。いつか黄泉路で会えるかも。