いつも前のめり

好きなことを好きなだけ

感情を書く【AI翻訳と人力翻訳】

去年の夏頃に、趣味の同人活動を通じて、とある韓国人と親しくなった。彼女も私と同じく同人活動をしていて、書いた小説を自費出版している。

そんな同じ趣味を持って、同じようなことをしている者同士で交流しているなかで、ある日、彼女から「私の韓国語で書いた小説を日本語で発行する手伝いをてしほしい」というオファーがあった。

 

え、なにそれ、おもしろそう!

 

ということで、私もすぐに快諾して、アマチュアたちによる韓国語の翻訳作業が始まった。

 

翻訳に関わるメンバーは私を含めて3人。

Sさん・・・原作者、韓国人、日本の単語を少しだけ読める、小説を書く経験豊富

Rさん・・・翻訳メンバー、韓国人、日本語学校に数年通っていた、小説は読むことしかしない

・・・日本人、日常的な英語がわかる、韓国語力はゼロ、小説を書く経験豊富

 

 

このメンバーで、当初の翻訳作業は下記のような流れで行っていた。

 

しかし、この流れはRさんの負担が大きかった。

というのも、平易な文章やレポートであればRさんにも訳す経験はあったものの、小説スタイルとなると少し勝手が違ってくる。そのため、半分を越えたあたりから、以下のような作業スタイルへと変更した。

 

これがさ、マジで、びっくりするくらい違うの!!

複数の翻訳機を交えつつ翻訳文のベースを作成してみたんだけど、どれもこれも印象は同じだった。

たしかに、Rさんの翻訳文にも「漢字間違い」「相手によって変わる言葉の端々表現」「表記ゆれ」など、修正の必要なところはいくつもあった。

けれど、これらに関しては、私が引き受けた「校正」の作業範囲でしかない。

あるいは、韓国の文化に根ざした表現を、どのように日本の文化に根ざした表現に置き換えるか、なども修正を行っている。(慣用句とか)

 

でも翻訳アプリでの翻訳文はそれら以上に問題があって、とにかくそこに情緒がない。ごっそり削ぎ落とされている。

これはAI搭載の翻訳アプリでも同じような結果だった。

確かに、ほとんどの文章は正しく翻訳されていた。

 

ちなみにこれ、私の偏見や先入観ってわけでもない。

というのも、上記のように作業スタイルが変更するという連絡を私が見逃しており、途中からあまりにも翻訳が平易になりすぎていたので「これはRさんの翻訳作業の途中?更新されるのを待った方がいい?」と確認したところ、発覚したという経緯もある。

この平易な文章というのが厄介で、小説の文章として成立させるために修正を加えるのがほんとにほんとに難しかった。

私は「何かを伝えたい」と思って書かれた文章には、そこに感情や色が描かれていると思っているし、実際にそう感じる。

国語のテストで「このときの筆者の気持ちをこたえよ」なんて問われるのは、その証左だろう。

明確に書かれていないものを、わたしたちは文章を読んで汲み取ることができる。そこには確かに、書き手が込めた意図や思いがある。

 

そういったものを拾い上げる時、一体何をもって「そう」と認識しているのか、今回の経験はそんなことを改めて考える機会になった。

文章はきちんと翻訳されている。

なのに、あまりにも質感に欠け、元の文章が活かされずに修正が必要だと感じる理由。

まだ突き詰めてはいないので、明確な結論というのはないんだけど、大きな問題は「場違い」かな、と思う。

 

たとえば、アン・ミカさんが提唱(?)するかの有名な「白って200色あんねん」というのがある。

まあ実際に数えてないのでわかんないけど、少なくともそう言われて、大抵の人はいくつかの白を思い浮かべられると思う。

そして、このシチュエーション、この文脈、この感情の揺れ動きが起こるさなかで「白」という言葉を用いる時に、わたしたちが文章を書くなら「どの単語を用いるべきか」と試行錯誤したりする。

そうして文章を完成させていくわけだけど、その完成した文章に載せられた「白」を表現する単語が日本語と韓国語で同じく機能するかというと、必ずしもそうではない。

これこそRさんが苦労したところであり、私がのちに翻訳機の文章を前にして頭を抱えたところだった。

 

だから、翻訳機の文章を前にして開かれるzoom会議での質問の多くは「この(日本語としての)意味はわかるの!! でもこう書いてある意図がわかんない!! このときって、こういうことをしてるの? こう思ってるから、こう行動したってことであってる??」という確認事項だった。

 

「日本語はわかるのに、意図がわからない」という経験、マジですごかった。

めっちゃくちゃストレス。

いまだかつてないほど、日本語というものに向き合ったなって思ったけど、実際には感情に向き合ったからこそのストレスだったのかもって今になって思います。

やっぱり人間みたいに言語を操るAIだけど、まだまだ「感情を書く」って無理なんだと思う。

ExcelやWordとかわんねえな~、ってさ。

やっぱ、人間の感情は人間にしか書けないよ。

って、そう思った。

 

それに、AIがもし自分の感情を獲得したら、そのときは人間の感情なんか書かずに、AI自身の感情を書いたりするのでしょう。

しらんけど。